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年金は「増やせば得」と単純に考えられないのはなぜか?

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年金は、受け取り始める時期によって金額が変わります。

原則65歳から受け取る老齢年金は、繰下げれば1カ月につき0.7%ずつ増額され、66歳から75歳まで受給開始を遅らせることができます。

一方、繰上げることで、60歳から64歳の間で受給を始められるのですが、この場合、1カ月につき0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの人は0.5%)ずつ減額されることになり、受給開始を早めるか遅らせるかによって、年金額そのものが大きく変わります。

そのため、年金の受け取り方を考えるときには「何歳から受け取るか」と「最終的にいくら受け取るか」が大きな判断材料になってくるのですが、実際は年金額だけのことを考えるだけでは不十分で、増えた金額がそのまま手元に入ってくるわけではないんです。

というのも、この受け取る年金には、税金や社会保険料も関わってくるんです

「年金が増える」と「手元に残るお金が増える」は同じではない

繰下げ受給では、受給開始を遅らせることで年金額そのものが増えます。

厚生労働省によれば、現在の繰下げ増額率は1カ月につき0.7%となっていますから、制度上は受け取りを遅らせるほど、毎回受け取る年金額は大きくなっていきます。

しかし、年金額が決まったあと、実際の振込額が決まるまでには、税や社会保険料も関係してくるんです。

日本年金機構の年金支払通知書では、年金の支払額だけでなく、そこから差し引かれる社会保険料や所得税、住民税なども確認できるようになっていて、制度上の「年金額」と、実際に振り込まれる金額は、もともと別の数字として扱われています。

厚生労働省の公的年金シミュレーターにも、税・社会保険料を試算する機能があり、年金額だけを計算して終わるのではなく、その後の負担まで含めて概算できるようになっています。

ですので、ここで分かるのは、「繰下げは得か損か」という二択だけでは判断しにくいということ。

「月いくら増えるか」だけでは、家計の変化は分からない

実際の生活を考えると、年金額と手元に残るお金は分けて考える必要があります。

例えば、79歳男性の事例では、夫婦の年金収入が月27万円でした。

この金額から税や社会保険料などが差し引かれ、さらに夫婦の生活費などを支払った結果、収入より支出のほうが月1万円程度多くなっているケースがあったりします。

もちろん「月27万円の年金でも赤字になる」というのは、事例内だけの話であり、これを一般化するのは適切ではありません。

月27万円という年金額自体も、すべての高齢世帯に当てはまる水準ではないですし、現役時代の働き方や加入期間、夫婦それぞれの年金額などによって受給額は変わってきます。

この事例から分かるのは、年金の額面だけでは、その世帯の家計にどれだけ余裕があるのかまでは判断できないということ。

実際には、年金から税や社会保険料などが差し引かれ、その後の金額から住居費、食費、光熱費、医療費などを支払うことになり、年金の額面が同じでも、家族構成や住まい、日々の支出によって、手元に残るお金は変わってくるんです。

だから、受給開始時期を決めるときも「将来受け取る年金額が一番多くなるのは何歳からか」だけでは、実際の家計までは見えてきませんし、増額された年金が、自分の家計ではどれだけ使えるお金になるのかまで考える必要があります。

「年金がいくら増えるか」だけでは家計への影響は分からない

ここまで見てきたように、繰下げ受給では、受け取りを遅らせるほど年金額そのものは増えます。

問題になるのは、その増えた金額が、すべてそのまま家計のプラスになるわけではないこと。

年金を受け取ると、そこから税や社会保険料などが差し引かれるので、繰下げによって年金額が増えた金額が、そのまま増額分として手元に残るわけではありません。

さらに、同じ年金額でも、実際の家計への影響は人によって違ってきますし、持ち家か賃貸か、住宅ローンが残っているか、医療費や介護費がどれくらいかかるか、夫婦それぞれにどの程度の年金収入があるかなどで、毎月必要になるお金は変わってきます。

ここで重要なのは、「繰下げは得か、損か」という一つの答えを出すことではなく、まずは老後生活において月にいくらくらいが必要なのかを調べておくこと。

月1万円年金が増えるとしても、その1万円をそのまま使える人と、税や社会保険料などを差し引いたうえで考える人とでは、実際の家計への影響は大きく異なってきます。

ですので、繰下げ受給を考えるときに見るべき数字は、「何歳から受け取れば年金額がいくらになるか」だけではなく、その増額によって、実際に手元に残るお金がどれだけ変わるのかを見る必要があります。

年金の増額率は制度を比較するための数字であり、手取り額は、自分の生活に置き換えたときの数字となります。

この二つを分けて考えることが、受給開始時期を考えるうえで最も重要なことになります。


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